19世紀末、ラムゼーが発見した3つの新しい元素…「クリプトン」「ネオン」「キセノン」

科学者ラムゼー

1869年にロシアの科学者メンデレーエフにより考え出された元素の周期律表は、元素の化学的性質には周期性があることを示しました。イギリスの科学者ラムゼーは、上記の説に従えば、それまでに発見されている原子量4のヘリウムと原子量40のアルゴンにより、新たに3つの新しい元素が存在すると予言しました(1897年)。

ラムゼーは、その存在の確認のために多大な努力を払いましたが、なかなか報われなかったようです。やはり新元素の存在量が極めて微量なためだったからでしょう。そんな中、ハンプソンが開発した空気の液化機が大きな役割を果たしました。ラムゼーたちは液体空気を注意深く気化させながら、窒素、アルゴン、酸素を取り除き、最後に残った残留物を真空管に入れてスペクトルを調べました。すると、驚くほどに美しく輝くスペクトル線が現れ、その比重はアルゴンより大きく、化学的性質もアルゴン族に属する新しい元素だということがわかりました(1989年)。ラムゼーは、この新元素にギリシャ語のKryptos(隠されたもの)からクリプトンと命名しました。

ラムゼーたちは予想した新三元素の1つを発見できたことにより、ほかの元素も発見できると信じ、さらなる実験を行いました。

液化したアルゴンを注意深く気化させ、今度は初めに気化したガスのスペクトルを調べました。そして新たなスペクトル線を発見し、その比重がアルゴンより小さいことを見出しました。この新元素にはNeos(新しいの意味)にちなんでネオンと命名しました。

さて、最後の新元素です。これはその存在量の少なさから大変な苦労をしたことが容易に想像できます。多量の液化空気を処理して液化クリプトンを手に入れ、それをさらに処理して最後に少量残った残ガスのスペクトルを分析し、クリプトンより沸点が高く、さらに比重の大きな新元素を、苦労の末やっと発見しました。ラムゼーはこの元素に、ギリシャ語のXenos(異国人の意味)にちなんでキセノンと命名しました。

1904年、ラムゼーは「空気中の希ガス類元素の発見と、周期律におけるその位置決定」の功績によりノーベル化学賞を受賞しています。

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